役員の送迎を主業務とする役員運転手。役員運転手を手配するには自社採用と外部委託の2通りの方法がありますが、近年は外部委託を選ぶ会社が増えています。今回は役員運転手を自社採用する流れや注意点などを、外部委託と比較しながら解説します。
役員運転手の雇用形態は、自社採用と外部委託の2通りです。外部委託はさらに請負契約・派遣契約に分けられます。請負契約とは運転と車両管理業務のみを委託するものであり、派遣契約は行き先などの業務指示を直接行う契約方法です。
自社採用の場合は正社員、契約社員、パートタイマーといった雇用方法があります。利用頻度が多くて稼働時間も長くなる際には、正社員または契約社員としての採用が一般的です。週に数日程度で比較的短時間の稼働であれば、パートタイマーとして雇うのもよいでしょう。役員運転手は残業や休日出勤が多く、待機時間中も勤務時間に含まれるため手当が高額になりがちです。勤務時間や業務内容が一般社員と大きく異なるため、契約社員として雇う企業が多いようです。正社員雇用の場合は、一般社員と異なる給与体系を考慮するケースもあるでしょう。
求人サイトやハローワークに求人を出したり、自社ホームページに求人を掲載したりして、役員運転手を募集します。求人に募集する人物像を明記したり、雇用形態や業務内容、給与、応募資格などを記載したりすると、応募者とのミスマッチを防ぐことにつながるでしょう。
書類選考では、応募者の職歴や勤務期間を確認します。応募者の前職が役員運転手であった場合には、経験を生かして採用後の業務へスムーズに移行できる可能性が高くなります。ハイヤーやタクシーの運転手経験者も、接遇マナーの高さや顧客の快適性を重視した運転経験が期待できます。
面接時には接遇マナーや身だしなみのほかに、事故歴・違反歴の有無や守秘義務を徹底できる責任感を持ち合わせているかなどを確認します。喫煙・飲酒の有無も質問し、業務に支障のない人を採用しましょう。自社役員との相性も重要なので、面接前に役員の意向を確認するとスムーズです。自社の役員車が左ハンドル車の場合など、配慮すべき事項がある場合には面接時に確認しましょう。
もし可能であれば、採用する前に一般道路や有料道路などで実地試験を行うとよいでしょう。役員運転手に最も重視されるのは、運転技術です。経歴として無事故・無違反であったとしても、運転が荒い可能性もあるので注意が必要です。
採用後は基本的な業務内容の教育に加え、自社役員のニーズに合った接遇ができるよう育成する必要があります。
役員の性格に一定の配慮が必要である、自社特有の注意点が多いなど特別な事情がある場合、役員運転手を自社採用すればニーズを満たした人材を厳選することが可能です。採用・教育をすべて自社で行うため、自社好みの運転手に育成することができるでしょう。
自社採用の場合、募集や書類選考、面接などの手間や採用後の育成をすべて自社で行わなければなりません。運よく希望通りの人材と出会えるとは限らず、採用が難航すれば無駄なコストは避けられません。また、一般企業では役員運転手を教育するノウハウが整っていないことも多く、快適性の高い運転や役員運転手ならではの配慮まで十分に教育するのは困難です。運転手の育成に関わる担当者も必要であるため、自社の業務効率やコストの面でデメリットとなります。
役員運転手を自社で採用する場合、残業代を抜きにして年収500万円弱程度の水準となることが一般的です。しかし役員運転手の業務は、役員のスケジュールに合わせて残業や休日出勤が多くなりがちであるため、時間外手当も高くなる傾向にあります。実際には給与以外にも労務関連の人件費が発生するので、年間650万円から800万円程度の経費が必要となるでしょう。また、運転手の採用や教育研修にかかる費用なども併せて考慮する必要があります。
自社採用では運転手の急な病欠や、予定外のスケジュールで急遽役員車を稼働させたいケースなどに備えて、役員運転手を複数手配しておかなければなりません。役員車の使用頻度は一定ではありませんから、時期によってスケジュールの過密が異なります。そのような状況で、常に自社の運転手を常駐させるのは非効率的といえるでしょう。
運転手を自社採用する場合、運転手が事故を起こせば自社が責任を負わなければなりません。適した自動車保険を自社で検討する労力もかかります。
外部委託で運転手を使用する場合であれば、業務中の事故は請負元の業者が責任を負う形となります。事故によるリスクを回避するためには、自社採用よりも請負契約のほうが安心であると言えるでしょう。
外部委託先の企業には多数のドライバーが在籍しており、役員運転手として専門の訓練を受けた優良ドライバーによるサービスを手軽に受けることができます。自家用自動車運行管理サービス会社にはドライバー教育のノウハウがあるため、自社採用で教育を施すよりも高品質な運転手を得やすくなります。快適性を重視した運転技術はもとより、外国語対応、地理に詳しく渋滞回避能力が高いなど、自社の細やかなニーズにも対応できるハイレベルなドライバーを選ぶことが可能です。
自社採用では避けられない募集・採用から教育までのコストを、外部委託ではすべて省くことができます。採用が難航すれば無駄なコストがかかり続けることになり予算の見通しを立てづらい一方、外部委託では月極定期契約・時間契約などにより料金体系が明確です。役員運転手の専門業者と契約する際には、人件費・任意保険・諸経費を含め月40~60万円程度が相場となります。
請負契約ならば運転手の労務管理や業務命令を出す必要がないので、自社の労力を削減することができます。運転手の残業や福利厚生などの労務管理は業者側が行うので、自社の手間はありません。
請負契約では、役員運転手の業務全般を請負業者が請け負う形の契約であるため、契約内容に規定された業務以外は行いません。基本的には運転業務と車両管理業務のみとなり、買い物などの雑務を追加で依頼することができない点に注意が必要です。運転関連の業務以外も柔軟に任せたいならば、人材派遣契約で役員運転手と契約できる業者から検討する必要があります。
運転手と自社役員との相性に不一致があった場合、不快な思いをする可能性があります。役員の希望を事前に確認して、業者へ的確にニーズを伝えればミスマッチを避けることができます。事前に運転手と面談をしたり、運転手の変更可能な業者を選んだりすると安心です。
自社採用と外部委託のメリット・デメリットを総合的に考えると、特別な事情がない限りは外部委託のほうが得られるメリットが大きいと言えるでしょう。
役員運転手を自社採用する際は、役員運転手としての経験の有無をしっかりチェックしておきましょう。未経験の場合、自社で一から教育しなくてはいけないため、採用のハードルが高まります。また、役員運転手としてのマナーも身に着けさせる必要があります。
一方で経験者の場合、役員運転手に必要なマナーをわきまえている可能性が高く、安全運転を心がけていると考えられます。採用のハードルも低くなるでしょう。
なお、タクシーやハイヤーの運転経験者も採用の余地があります。これらの職業はお客を乗せて運転するため、ドライバーとしての経験が十分です。
採用の可否を決める時は、運転した経験がある車種も確認しましょう。役員運転手は、左ハンドルや大型の車両など、少々特殊な車を運転することもあります。そのため、左ハンドル車や同等の車の運行経験がある場合、運転には慣れていると判断できます。役員運転手としても活躍してもらえるでしょう。
不安があるなら、一度試しに運転してもらうのもおすすめです。実際の運転を確認すれば、運転技術や乗り心地を体感することができます。
依頼するエリアの土地勘があるかどうかも確認するべきポイントです。役員運転手は、毎回同じルートを運行するわけではありません。渋滞を避けるために裏道を使うなど、状況に応じた柔軟な対応力が求められます。こうしたケースに対応するためには、そのエリアでの土地勘が必要になります。
カーナビを使う手もあるものの、裏道などはナビに登録されていないこともあります。予定どおり運行するためにも、柔軟にルートの選定・変更が可能な土地勘が必須といえます。
ドライバーの人柄もチェックしておきましょう。役員とドライバーは日々顔を合わせるため、ドライバーは相性がよく、信頼関係を構築できる人物であることが望まれます。運転中のドライバーは基本的に無言ですが、時には役員との会話を楽しむこともあります。もしドライバーが付き合いやすい人柄であれば、役員と適度にコミュニケーションが取れ、信頼関係も構築できるでしょう。
ただ、人柄や相性を面接時点で判断するのは困難です。可能なら、担当する役員と顔合わせを行い、相性を判断してみるとよいでしょう。
役員運転手は常に運転しているわけではありません。待機時間も発生するため、待機場所の確保も必要になります。どこで待機してもらうかを事前に決めておきましょう。同様に洗車場所の確保も求められます。汚れた車に役員や取引相手を乗せるわけにはいかないため、洗車可能な場所もチェックしておきましょう。
いずれもオフィスから遠いと配車に時間がかかります。できるだけオフィスの近くで探すことをおすすめします。
会社で役員運転手を雇って契約を結ぶ場合、任意で雇用契約書を作成することになります。任意とはいえ、内容次第では後々労働トラブルを招くリスクもあるため、雇用契約書に「何を書くべきか」をしっかり吟味しておかなければなりません。
役員運転手の雇用契約書に書くべき内容は、勤務時間、休憩時間、仕事内容、賃金、専属担当制の有無、機密情報の取り扱いなどがあります。勤務時間に関しては一日の労働時間だけでなく、出勤日数や業務がない場合の取り決めを記載しなければいけません。賃金については月給制か歩合制か、日給、時給など計算方法の記載が必要です。
また、特定の役員専属の運転手として雇う場合は、当該の役員が退職した場合の運転手の処遇についてを明確にしておきましょう。機密情報に関しては、勤務中に得た情報の取り扱いについてのルールを明記しておくことが大切です。
会社として役員運転手と契約する方法には、「雇用契約」と「業務委託契約」の2つがあります。両者の違いは、会社と運転手の関係性です。どのように違うのか、それぞれの特徴を解説します。
雇用契約は、会社と運転手が雇用関係を結ぶ契約のことです。会社が使用者、運転手が労働者という労使関係を構築。労働者が会社側に労働を提供し、その労働に対して会社側は「給料」を支払います。労働者は会社の人間になるため、会社の法規を遵守しなければなりません。会社も労働者に対して就業規則を定めたり、勤務条件、勤怠、給与管理など労務管理が必要です。
業務委託契約は会社側と運転手の雇用関係(労使関係)ではなく、会社と運転サービスを提供する社外の「事業者」との間で、業務(運転サービス)に関してのみ取引関係を結ぶ契約のことです。
この場合の事業者には二通りあります。一つは複数の運転手が所属する専門業者、もう一つは個人の運転手が営業している個人事業者です。このうち、専門業者と契約した場合の運転手は「委託先」となりますが、個人事業者と契約した場合は法的に「労働者」とみなされる可能性があります。
運転手が委託先であれば、会社との雇用関係はないため、社内法規に拘束されることはありません。運転手は契約したサービス(車の運転)のみを提供するのが務めであり、会社側も運転手に対する労務管理は不要となります。しかしこれが個人業主となると、実質的に雇用関係があるとみなされ、仕事内容や報酬を巡ってトラブルになる可能性も考えられるので注意が必要です。
そのため、運転手と業務委託契約を交わす際は、仕事内容や報酬に関する内容を詳細に記載した契約書を作成しましょう。
しっかりした教育制度を前提としたうえで、それぞれ費用・人材・融通でおすすめできる役員運転手サービス3社を紹介しています。
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※Googleで「役員運転手派遣 東京」と検索し、東京エリアの役員向け運転手派遣サービスを39社調査。運転手の教育制度・利用料金について明記している企業のなかで、「利用料金が最安」「登録運転士数が最多」「運転以外のサービス例が最多」の会社をそれぞれ選定しています。
※登録運転士数:トランスアクトのみ記載有。
※対応できるサービス例:トランスアクトは秘書業務、総務業務、簡単なお買い物の3例。トータルドライバーサービスは簡単な秘書業務、総務業務、英会話対応の3例。
※スポット料金:トランスアクトは38,500円~、ボランチは31,900円~(9h利用・法人の場合。すべて税込)
※掲載されている各情報は2021年9月1日時点のものです。