役員運転手には、一般的なドライバーと比べて待機時間が長めになったり、勤続時間が断続的になったりといった特徴があります。加えて長時間労働になりやすいので、労働時間が時間外労働の上限を超えてしまうことも少なくありません。そこで必要になってくるのが「断続的労働の適用除外制度」です。ここでは、役員運転手の断続的労働と適用除外制度について見ていきましょう。
作業が継続的ではなく、待機時間などを挟んで作業を繰り返すタイプの労働は、断続的労働と定義されています。断続的労働の場合、通常の継続的労働に比べて身体的疲労や精神的疲労がそれほどないという見解から、36協定で定められている「労働時間」「休憩時間」「休日」などの労働時間規制の対象外となるのです。
また、役員運転手の仕事には明確な休憩時間が定められていません。加えて、役員を目的の場所に送り届けてから次の送迎が始まるまでの時間も、休憩時間ではなく待機時間として扱われるので労働時間に加算されます。
このように、役員運転手という仕事は、一般的な仕事と比べて、特に労働時間の面で大きく異なる仕事なのです。
そうした役員運転手という仕事の労働時間についての特殊性を解決するための制度が「適用除外制度」です。この制度は、役員運転手の仕事に対する36協定における時間外労働の適用を除外するという制度です。
この制度の対象となる労働は「実作業が間欠的」「待機時間が長い」というふたつの特徴を備えているもので、役員運転手のほかには守衛や住み込みの管理人といった仕事がこの条件に当てはまります。
適用除外制度の対象となる労働形態は、「実作業が間欠的」「待機時間が長い」というふたつの特徴を備えているものです。したがって、役員運転手の仕事も適用除外制度の対象となります。
ただし、役員運転手の仕事に対して適用除外制度を適用する際には、いくつかの注意点があります。まず、適用除外制度を適用した場合、法定労働時間という概念がなくなるという点です。ドライバーに支払う給与は、あらかじめ残業代や休日出勤分を含んだ基本給となります。
また、一般的な仕事のように休日出勤手当や残業手当は支給されません。
さらに、法的には実作業時間が8時間を越えなければ何時間でも勤務できることになってしまうので、勤務時間の調整も重要となります。
役員運転手の断続的労働が許可されるには、以下の3つの条件をクリアしている必要があります。
断続的労働としてみなされるには、実作業と待機時間が交互に繰り返されるような業務でなくてはいけません。そのため、たとえばもともとの作業が継続的なもので、労働者が自分の意志で休憩しているような場合は断続的労働としては認められないのです。
労働中に発生する待機時間が長時間に及ぶ場合でも、断続的労働として認められるには待機時間が実作業時間よりも長くなくてはいけません。
ふたつの条件に加えて、実作業時間の合計が8時間以内でなくてはいけません。この根拠は、労働基準法で定められている労働時間が8時間という点です。
この3つの条件をすべてクリアして、はじめて断続的労働が許可されるのです。そして、そのうえで労働基準監督署長の許可を得ることで、「断続的労働の適用除外制度」を利用できるようになるのです。
役員運転手の仕事は、一般的な労働とは異なる断続的労働です。そのため、いくつかの注意点があります。
断続的労働の適用除外に該当するのは、「労働時間」「休憩時間」「休日」の3つです。このうちの「労働時間」には、1日8時間・1週間40時間を超える時間外労働も含まれているので、役員運転手などの断続的労働には残業代や休日出勤手当は含まれていません。しかし、深夜手当は支給されるので注意が必要です。
なお、一般的な仕事における深夜労働の給与は通常の給与の1.25倍となっていますが、断続的労働の適用除外制度を適用している場合は、加算対象となるのは割増分の0.25倍となります。
36協定については、2019年4月に時間外労働について罰則付きの上限が定められました。そして、断続的労働の適用除外制度を適用している場合でも、従業員の健康や福祉を考慮して、「月45時間・年360時間」という時間外労働の上限を踏まえるように勧めています。そのため、適用除外制度を適用していても、時間外労働は極力避けるべきなのです。
断続的労働には残業代が含まれていません。しかし、給与から残業分の金額がそのままなくなってしまうのでは、給与は大幅に減額されてしまいます。そのため、役員運転手に支払う給与には、あらかじめ残業分も組み込んでしまうのが有効です。ただし、単に「基本給」という項目だけしかないと給与の内訳がわからずトラブルになることもあるので、給与の内訳はかならず明記しておきましょう。
実は、雇用契約書はかならずしも作成しなくてはいけないものではありません。必ず作成しなくてはいけないのは、労働条件通知書です。
しかし、労働条件通知書はあくまで雇用主から被雇用者に一方的に通知されるもの。そのため、やろうと思えば内容の改ざんが可能ですし、雇用主と被雇用者双方の納得のうえで作成された書類ではありません。
そのため、企業とドライバー双方が労働条件に納得しているという証明のためにも、雇用主とドライバー双方の署名捺印が必要な雇用契約書を作成しておくことをおすすめします。
労働条件通知書の作り方は、正社員、契約社員、パート・アルバイトなど雇用形態によって記載すべき内容が変わります。ここでは、雇用形態別の労働条件通知書の作り方を紹介します。
正社員用の労働条件通知書には、本採用前の試用期間の有無と長さ、その期間の給与、本採用しない可能性もある事などを記載する必要があります。また休日出勤・所定時間外労働の有無、運転手から他部署への移動の可能性についても明記しておくとよいでしょう。いずれも書面の形で作成しておくことで、様々な労働トラブルを回避できます。
役員運転手が契約社員である場合は、労働条件通知書に契約期間や契約更新の有無を明記しなければなりません。更新の可能性がある場合は、更新を判断する基準を明示するほか、更新後の各種労働条件の記載も必要です。なお、雇用期間が5年を経過した場合は契約社員の5年ルール(※)により、期間を設定しない無期雇用に転換できます。よって、運転手に権利行使のタイミングを周知意味でも、契約期間の明示は必須です。
※参照元:労働契約法改正のあらまし|厚生労働省
パート・アルバイトの労働条件通知書には、労働契約期間、就業場所、業務内容、昇給、休日・休暇等の絶対的明示事項に加え、退職手当、ボーナス、安全衛生、職業訓練といった相対的明示事項を記載します。アルバイト・パートで退職金が受け取れるケースは少ないですが、制度がある場合は支払日や計算方法を記載しておくとよいでしょう。
役員運転手の雇用契約書に記載する内容は、絶対的記載事項と役員運転手の業務に合わせた明示事項の2つがあります。絶対的明示事項は労働基準法第15条に規定されたもので、雇用期間や労働条件(勤務時間・休憩時間含む)、就業場所、給与、支払日、有給休暇の取り決め、退職制度に関する事項です。これら絶対的明示事項は労働契約の締結の際に必ず明示しなければなりません。
一方、役員運転手の業務に合わせた明示事項には、専属担当制の有無や機密情報の取り扱いに関する事項があります。会社によって運転手が特定の役員の専属運転手になる場合もあれば、ランダムに配属される場合もあるでしょう。また重役を車に乗せて運転するとなると、日常的に会社の機密情報に触れる機会も多くなるかもしれません。こうした事情を踏まえ、役員運転手の雇用契約書には絶対的記載事項に加えて、運転手の配属に関する事項や秘密情報の取り扱いに関するルールの記載が必要です。
企業の重要人物である役員を送迎するためのドライバーである役員運転手。その役員運転手には、請負業務と派遣業務があります。
請負業務の場合、請負会社からドライバーが配置されるのは派遣会社と同じです。しかし、請負業務の場合は人材ではなく業務を提供する形となります。そのため、企業側はドライバーの業務を管理する必要がないので、業務負担を大幅に削減できるというメリットがあります。対して、企業側はドライバーに対して直接業務に関する指示をすることはできません。
対して、派遣業務の方は、派遣会社と派遣会社から派遣される役員運転手とが契約を結んでいる形です。派遣業務の場合、給与の支払いやドライバーのスケジュール管理などを派遣会社に任せられるので、人的・時間的コストを大幅に削減することができます。また、雇用時間の調整なども行えるので、コスト削減に加えて企業側の都合に合わせた柔軟な対応が可能です。
しっかりした教育制度を前提としたうえで、それぞれ費用・人材・融通でおすすめできる役員運転手サービス3社を紹介しています。
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※Googleで「役員運転手派遣 東京」と検索し、東京エリアの役員向け運転手派遣サービスを39社調査。運転手の教育制度・利用料金について明記している企業のなかで、「利用料金が最安」「登録運転士数が最多」「運転以外のサービス例が最多」の会社をそれぞれ選定しています。
※登録運転士数:トランスアクトのみ記載有。
※対応できるサービス例:トランスアクトは秘書業務、総務業務、簡単なお買い物の3例。トータルドライバーサービスは簡単な秘書業務、総務業務、英会話対応の3例。
※スポット料金:トランスアクトは38,500円~、ボランチは31,900円~(9h利用・法人の場合。すべて税込)
※掲載されている各情報は2021年9月1日時点のものです。